
浅草寺の北側、かつての花街の風情を色濃く残す「観音裏」。その一角に佇む長屋の端に、楚々とした白い暖簾を掲げる店がある。「酒さかな ずぶ六」。2017年の開業後、『ミシュランガイド東京2019』のビブグルマンに選出された、隠れ家的な居酒屋だ。店名は江戸時代の言葉で「心地よくお酒に酔った状態」を意味する。
間口が狭く奥行きのある、長屋ならではの情緒を活かした店内には、わずか7席の潔いカウンター。ここでは、店主の谷口賢一氏がワンオペレーションで静かに、そして細やかに客を迎え入れる。その控えめでいて温かい距離感が、日常の喧騒を離れて静かにお酒と向き合いたい大人たちに、これ以上ない居心地のよさを与えてくれる。
同店の魅力は、なんといっても店主の実直な手仕事が光る酒肴の数々だ。店主自らが毎朝の通勤途中に市場へと足を運び、目利きして仕入れる生の天然魚は鮮度抜群。お一人様や少しずつ色々味わいたい客に寄り添う「Sサイズ」から用意された刺身盛合わせを口に運べば、その丁寧な仕事ぶりに思わず笑みがこぼれる。独学でありながら抜群のセンスが光る和食ベースの品々は、丁寧に引いた出汁が香る3種のお通しから、季節の息吹を映した日替わりの肴まで約35種類。どれも呑み助の心を丁寧に掴む、滋味深く美しい一皿ばかりだ。
カウンターの向こうには、店主が選び抜いたお燗映えする一升瓶が顔をのぞかせる。冷酒約10種類、常温・お燗用約15種類が常時揃う日本酒は、90ml、120ml、150mlと好みの容量で注文できるのが嬉しい。半合(90ml)ほどの少量から愉しめるため、色々な銘柄をちびちびと飲み比べ、移り変わる温度ごとの豊かな旨味に浸る時間を過ごせる。また、日本酒のほかにも、クラフトビールやサッポロラガービール(赤星)が用意されており、気分に合わせて心地よく喉を潤すことができる。
凛とした静けさと、手製の器に盛られた美しい料理、速度、そして心に染み入る旨い酒。「ずぶ六」のカウンターに身を委ねれば、浅草の夜がもっと深く、愛おしいものになるはずだ。





●住所
〒111-0032 東京都台東区浅草3丁目34−3
●公式サイト / SNS
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